恋のはじまりは曖昧で
主任の好きだった人
今日は朝から営業会議があるので、いつもより早めに出社した。
会議室の準備をしようとドアを開けると、すでに原田部長がいた。
ホワイトボードを移動させたりしていたので、私は焦って駆け寄った。
原田部長は偉ぶることなく、率先してこういった準備もしてくれる。
逆にこっちが申し訳なくなるぐらいだ。
『私がやります』と言ったけど、『ここはいいからコーヒーを頼む』と言われたのでそのまま給湯室に向かうと、すでに人の影がある。
弥生さんがコーヒーカップを棚から出していた。
「おはようございます」
「おはよ。今日、会議に出るのはだいたい十人ぐらいだって」
「分かりました。何往復かしないといけない感じですね」
「そうだね、気を付けて運ぼう」
コーヒーの準備をしていると、営業の人たちが続々と出社してきていた。
そんな中、佐藤さんがひょっこりと給湯室に顔を出す。
「おはよう」
「おはようございます」
「高瀬さん。あのさ、来月から湯木村建設の現場でセメントがかなりの数量出るんだ。まだ単価は決まってないから、決まり次第教えるから」
「はい、分かりました」
「あ、それと請求書とは別にその現場だけの出荷明細も作ってもらえると助かる」
「分かりました。月末にまとめたものを提出すればいいですか?」
「よろしくな」
佐藤さんはそう言って資料片手に会議室へと向かった。