恋のはじまりは曖昧で

私は田中主任のサポートだけでなく、運輸部から出荷される建材の請求業務もしている。
得意先によって営業の担当者が違うので、誰がどこの会社の担当をしているのかを理解した上で単価の確認をしないといけない。
最近は、そういったこともスムーズに出来るようになってきたと思う。

「じゃ、運んでくるね」

弥生さんがお盆に何個かコーヒーカップをのせて給湯室を出た。
私も同じようにしてお盆を持ち、会議室へ向かっていると浅村くんとバッタリ会った。

「おー、高瀬。おはよ」

「おはよ。どうしたの?ちょっと眠そうだね」

「夜中までゲームしてたからなぁ」

「何それ。会議があるって分かってるんだから早く寝ればよかったのに」

「やり出したら止まらなかったんだよ。じゃあな」

浅村くんは必死に欠伸を噛み殺しながら会議室に入り、席に着いた。

座る席は特には決まってないけど、毎回みんな同じ場所に座っている。
まだ、来ていない人の席にもコーヒーを置いていく。
私と弥生さんはコーヒーを並び終えると、軽く頭を下げ、会議室のドアを閉めた。

「コーヒーを運んでいる時、腕がプルプルしちゃった」

「私もです。ちょっと欲張ってカップを置いたので重くなっちゃって」

「分かる。何往復もしたくないから、ついたくさん持って行こうとするんだよね」

そんなことを話しながら営業のフロアへ戻ると、田中主任の姿があった。
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