恋のはじまりは曖昧で
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「紗彩が熱なんて珍しいな」
「私も久々でビックリしてる」
夕方、海斗がお見舞いに来てくれた。
私の大好きなプリンやフルーツゼリー、レトルトのおかゆやスポーツ飲料など大量に買いドラッグストアの袋を揺らしながら部屋にやってきた。
しかも、その袋にはちゃっかり風邪薬まで入っているし。
『どうせ、薬もないだろうと思って』と完全に見透かされていた。
流石、幼なじみだなと感心したりして。
「ほら、これでも貼っとけ」
海斗は冷却シートを私の額にペタリと貼る。
「冷たっ」
でも、ヒンヤリして気持ちいい。
ゴホゴホと咳が出だしたので、救急箱の中に入っていたマスクをつけていた。
「おかゆ食べるか?」
「あとで自分でするからいいよ」
「とか言って、お前は時間が経つと面倒になってそのまま寝るだろ。薬飲むんなら何かしら腹に入れとかないと」
海斗がガサガサとドラッグストアの袋を漁っていると、インターホンが鳴った。
「あ、俺出るわ」
私がベッドから起き上がろうとしているのを制止して、海斗が玄関へ向かう。
せめて誰が来たのかモニターを確認してよ!と言おうと思ったけど遅かった。
「はいはーい。どちらさんですか?」
呑気な声で玄関のドアを開ける音が聞こえた。
ちょっと待て!ここ、私の部屋なんだけど。