恋のはじまりは曖昧で
気持ちを伝えるとか、全くそんなことは考えていなかったので、人生最大のピンチだ。
もし、勇気を出して気持ちを伝えたとして田中主任は私のことをどう思っているんだろう。
何とも思っていなかったら、この気持ちは迷惑以外のなにものでもない。
私だって、こんなところで振られたくはない。
「あの、話の流れというか、何というか……」
モゴモゴと口ごもる。
でも、誤魔化すことなんて出来ない状況に陥っている。
煮え切らない態度の私に痺れを切らしたのか、田中主任はとんでもない質問をしてきた。
「ちょっと意地悪だったかな。じゃあ、さ。高瀬さんは俺のこと、どう思ってる?」
えぇーーー!!!
突然そんなことを聞かれ、あり得ないぐらい脈が速くなっていく。
どう思ってるって、『好きですけど何か?』なんて、上司に向かってそんなこと言える訳ないじゃない!
それより、どう答えたら正解なんだろう。
脳みそをフル回転させる。
そして、しどろもどろになりながら話す。
「えっと、上司として尊敬していますし、すごく素敵な方だと思っています」
「上司として、ね……。じゃあ、男としては?」
「へっ?」
素っ頓狂な声が出た。
男としてって……ぶわっと頬が火照るのが自分でも分かる。
何かもう身体中が熱を持っている感じがして、外の空気にあたりたくなった。