恋のはじまりは曖昧で

「あー、腹一杯。やっぱ、ここのラーメンは旨いな」

食べ終えて『ゲプッ』と私の隣りでゲップをしたので、思わず眉間にしわが寄った。

「ちょっと、汚いなぁ」

「仕方ないだろ、生理現象なんだから。オナラとゲップは自分じゃ制御できない」

「何それ」

クスクス笑いながら会計を済ませ、ラーメン屋を出て歩き出す。
街灯が灯り、車道を走る車のライトが時折眩しく感じた。

改めて報告するのは緊張するけど、幼なじみの海斗にはちゃんと自分の口から伝えたかった。
少し歩いたところで立ち止まり、一呼吸して口を開く。

「あのね、海斗に話しておきたいことがあって」

「ん?なんだよ」

「私ね、彼氏が出来たの」

「は?」

海斗はピタリと足を止め、驚いたのか口があんぐり開いている。
そして、弾かれたようにガシッと私の両肩を掴んだ。

「ちょっと待てよ。今、なんつった?」

「だからね、彼氏が出来たって言ったの」

「嘘だろ……。誰だよ、相手は!」

一気に険しい表情になる。

「会社の上司で、海斗も何度か会ったことがあると思うんだけど」

「まさか、パーティー会場にいたあの男か?」

「うん」

「何でだよ……」

海斗の小さくつぶやく声が聞こえた。

「え?」

「俺の方がそいつより先にお前のことが好きだったのに」

そう言って私の身体を抱きしめてきた。
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