恋のはじまりは曖昧で
海斗が私のことを好き?
突然のことに驚いて、理解するのに数秒かかった。
「特に恋愛に興味なさそうだったし、紗彩の隣にいれるならまだ幼なじみっていうポジションでも我慢できたのに……。何でだよ。こんなことなら、もっと早く告っとけばよかった」
今まで聞いたことのない海斗の切ない声色に言葉が出ない。
まさか、海斗が私のことを好きだなんて夢にも思っていなかった。
どれだけ鈍いんだろう、私。
いつも隣にいてくれて、困っている時には助けてくれた。
そんな海斗の優しさに甘え、私に向けてくれていた感情に全く気付かないで……。
無意識のうちに海斗のことを傷つけていたのかも知れない。
いや、確実に傷つけていたんだ。
そう思っただけで胸が痛い。
「ごめん、」
私は唇を噛んだ。
恋愛経験ゼロな私はこの場合なんて言っていいか分からず、ただ謝ることしか出来ない。
ふと、自分のおかれている状況に気付き、海斗の胸を押して少し距離を取る。
「別に謝ってほしい訳じゃねぇよ」
「ご……」
もう一度、ごめんと言いかけてやめた。
海斗は空を見上げ、「あー、何やってんだ俺は」と言って大きく息を吐いた。
そして、頭をガシガシと掻いて一言。
「今、幸せか?」
その言葉に私はゆっくりと頷いた。