恋のはじまりは曖昧で
「どんな子なの?」
「何でそんなことを鈴に言わないといけないんだよ」
「いいじゃない。気になるんだから」
「あ、俺も気になります」
花山主任は前のめりで聞き、それに浅村くんも参戦する。
同期だからだと思うけど、田中主任と花山主任が名前で呼びあっていて、少しモヤモヤした。
「何だよ、二人して鬱陶しいな」
田中主任はため息交じりに頬杖をつく。
さっきの会話が耳に入った弥生さんが私に向かって口を開く。
「田中主任、彼女出来たんだってね」
「そうみたいですね」
動揺しながらも、それを必死に隠して答えた。
その件で私に話しかけないでください!と心の中で訴える。
「どんな人なのかな。きっと美人な人なんだろうな」
ごめんなさい、残念ながら美人でもなんでもありません。
地味系平凡OLですと、心の中で謝罪していたら、弥生さんは立ち上がりお手洗いに向かった。
やっぱり、田中主任と釣り合う女の人って美人な人だと思われているんだ。
そんなことを考えるとため息が出る。
私と付き合っているなんて周りに知られたら『何でこの子が?』って思われるよね。
ネガティブ思考に陥っていたら、田中主任の声が耳に届いた。
「真面目ですごく可愛い子だよ」
「ちょっと惚気?」
「お前が言えって言ったんだろ。もう二度と言わない」
田中主任と花山主任が言い合いをしていた。