恋のはじまりは曖昧で
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「さて、どういうことか説明してもらおうかな?」
言い方は優しい感じなのに、目が笑っていないような気がする。
食事が終わり、私は田中主任と帰る方向が同じということで一緒にタクシーに乗った。
運転手に行き先を告げ、タクシーが走り出してすぐにさっきの件を聞かれた。
私も話さなきゃと思っていたけど自分から切り出すには勇気がいったので、先に聞いてもらえてよかった。
「先日、幼なじみの海斗に付き合っている人がいると報告しようと思って晩ご飯を食べに行ったんです。そしたら、その帰りに……」
そこまで言ってピタリと止まる。
どうしよう、言わないといけないのに内容が内容なだけに躊躇してしまう。
黙っている私を見て田中主任はため息をついた後、口を開いた。
「幼なじみくんに告白でもされた?」
弾かれるように横に座っている田中主任を見ると目が合った。
「やっぱりな」
「あの、やっぱりって……」
「彼が高瀬さんに好意を寄せているのは一目見て分かったよ。初めて会った時に敵意むき出しの視線を向けられたからな」
敵意むき出し……だから海斗はあの時、不機嫌そうに田中主任のことを言ってたのかな。
いやいや、今はそれよりも大切なことを言わないといけない。
「でも、田中主任と付き合っているからと言ってハッキリ断りました」
「そうしてもらわないと俺も困るけど」
田中主任は苦笑いする。