恋のはじまりは曖昧で
「もし田中主任が自分のせいで、なんて思うのなら、私から離れようとしないでください。そばにいて見守っていてください」
好きな人が隣にいてくれるだけで私は頑張れるんだ。
それに、せっかく田中主任と想いが通じ合ったのに、こんな状態で別れを告げられるなんて悲しすぎる。
私たちはまだ始まったばかりだ。
「一人だとくじけそうなことでも、二人なら乗り越えられると思うんです」
逆の立場だったら、と考えてみた。
私じゃ、まだまだ役不足だと思う。
だけど、田中主任に何かあった時にそばにいて支えてあげられるような存在になりたい。
「私は田中主任と一緒にいたいです」
「あはは、頼もしいな。ホント君には敵わない。ありがとう、そう言ってくれて」
田中主任は私の力説に呆気にとられていたけど、ハニカミながらホッとしたように息を吐く。
よかった。私の気持ちが届いたんだ。
安堵していたら、腕が伸びてきて私は田中主任の腕の中にいた。
抱きしめられるとドキドキするけど、すごく安心する。
田中主任は甘えるように私の首筋に顔を埋めてきた。
くすぐったかったけど、その仕草に愛おしさがこみ上げてくる。
思っているだけじゃ自分の気持ちは伝わらない。
口に出してこそ、相手に伝わるんだ。
そう考えたら、この言葉を今、言わずにはいられなかった。
「好きです。浩介さん……」
「俺も好きだよ」
そう言って私の額に優しくキスを落とした。