恋のはじまりは曖昧で
駄菓子が大好きで、駄菓子屋に行くと楽しそうに、三百円までと自分で金額を決めて買い物をした。
私とはどっちが三百円に近い金額で買い物が出来るかなんて競ってレシートを見せ合ったりしたこともあった。
そんな感じで、海斗は庶民的で情に厚くていいヤツなんだ。
「ねぇ、海斗って香水とかつけたことある?」
ふと、そんなことを聞いてみた。
「は?突然何言ってんだよ。俺がそんなん付ける様な男じゃないのはお前がよく知ってるだろ」
「だよね」
「俺はあんま香水とかの匂いが好きじゃないんだよ」
海斗は匂いに敏感だ。
鼻が利くとでもいうんだろうか。
常に鼻をピクピクさせてる気がする。
あと、海斗はタバコの臭いが大嫌いで自分は絶対に吸わない。
海斗のお父さんがよくタバコを吸う人だった。
子供の頃、海斗は「禁煙しろ」と何度もお父さんに向かって言ってたのを覚えている。
その海斗からは仄かに柔軟剤の匂いがするだけ。
今まで、私の周りには香水をつけている人がいない環境だった。
だから、うちの営業の人は何かしら香水の匂いがして、それだけで大人な雰囲気がする。
浅村くんは同期だし、性格的にも別だけど。