恋のはじまりは曖昧で
「嘘をつく時は鼻を触ったり口元を隠すとかいろいろ言われてるだろ。お前の場合は耳なんだよね」
海斗は自分の耳たぶを触りながら説明する。
そして「だから俺に隠し事なんて百万年早いって言っただろ」とニヤリと笑った。
「お待たせしました」
ヘコんでいたけど、店員さんの声に気を取り直す。
テーブルの上に野菜炒め定食とレバニラ定食が運ばれてきた。
ご飯にみそ汁、山盛りの野菜炒め、小鉢にはピーナツ豆腐と揚げ茄子のお浸し。
それに漬物とデザートのフルーツ寒天。
これでワンコインなんだから、お得感満載だ。
「これは俺からの就職祝いだ」
そう言っておじちゃんは唐揚げやコロッケの入ったお皿を私と海斗の前に置いた。
「マジでいいの?超嬉しいんだけど」
「おう、しっかり食えよ」
「おじちゃんありがとう!」
おじちゃんの心遣いに感謝し、二人してテンション高くお礼を言う。
「いただきます」
手を合わせ、割り箸を割ってまずはみそ汁に口をつける。
「やっぱ、ここの飯は美味いよな」
「うん。安いしね」
海斗と絶賛しながら箸を進めていく。
ピーナツ豆腐を口の中へ入れる。
このまったりとした舌触りが堪らない。
あっという間にお皿の料理はなくなった。
ご飯を食べ終え、お冷を飲もうと手を伸ばすと、そのコップを海斗が素早く取り、立ち上がった。