恋のはじまりは曖昧で
で、数年後に姉が彼氏として連れてきたのは私が憧れていた先生だったという。
その時は衝撃のあまり、言葉にならなかったのを覚えている。
定食屋の駐車場に停まっているシルバーのセダンタイプの車に乗り込んだ。
新車だから気を遣って車に乗るときに靴を脱ごうとしたら、海斗にそのまま乗れよと呆れたように言われた。
私の思いやりの心を返してよ!
取りあえず、今日は雨が降ってなくてよかったと思った。
泥水が付いた靴で新車に乗るのは、いくら幼なじみとはいえ気が引けるからね。
エンジンをかけ、スムーズに車は走り出す。
車内は、新車特有のにおいがし、今流行の曲が流れている。
海斗の運転も上手いなと感じた。
心地いい振動に満腹の状態だとすぐに眠ってしまいそうになる。
他愛もない話をしていると、あっという間に私のマンションの駐車場についた。
シートベルトを外し、車から降りてドアを閉める。
「送ってくれてありがと」
「おぅ。またいつでも乗せてやるよ」
「気を付けて帰ってね」
私が手を振ると海斗は助手席の窓を開けて「おやすみ」と言って、軽く手をあげた。
車が走り出したのを見送り、マンションへ入った。