恋のはじまりは曖昧で
主任と会議室で
「おはようございます」
「おはよ。あ、高瀬さん。悪いんだけど会議室にコーヒー五つ、持って行ってくれない?部長たちが打ち合わせしてるんだ」
「はい、分かりました」
営業のフロアに入って早々、加藤さんに声を掛けられた。
バッグを机の一番下の引き出しに入れ、給湯室へ向かう。
ちょうど今週は私が当番だから、いつもより早めに出社した。
当番は、朝出社したらポットにお湯の準備をしたり、来客があった時にお茶やコーヒーを出したりする。
コーヒーカップを棚から出しコーヒーを淹れた。
部長たちはブラックだからミルクや砂糖は必要ないと教えてもらい、大体の営業の人の好みは把握した。
お盆にコーヒーカップを五つのせて会議室まで運ぶ。
こぼさないように慎重に歩きドアの前で足を止めた。
どうしよう、ドアをあけなくちゃいけない。
ひとまず、お盆を自分の身体に引き寄せ、右手で支えて空いた左手でノックする。
よし、第一段階クリア。
次はドアを開けようと思った時にドアが開いた。
「あ、高瀬さん。どうぞ」
ドアの向こう側に倉井さんがいて、中へ入るように促された。
お礼を言って会議室の中へ入ると、原田部長、河野課長、田中主任、佐藤さんがいた。
この五人で打ち合わせをしているのか。
私が入った時も真剣な話し合いが続いている。