恋のはじまりは曖昧で
「何?」
「ついでにこれをシュレッダーにかけて欲しいなと思って」
「いいよ、貸して」
「へ?」
私の返事に浅村くんはキョトンとした顔をする。
きっと、私が素直にいいよって言ったから驚いたんだろう。
「だから、シュレッダーかけるんでしょ。やるから貸してよ」
「お、おう。でも、どうしたんだ?高瀬が文句も言わずにすんなりやってくれるとか、明日は雪が降るかな?」
そんなことを言いながら、窓枠に手をかけ空を眺めている。
「何それ!どういうことよ」
雑用とかは私の仕事だし、浅村くんはこのあと外出する予定になっているのを知ってるから文句なんか言わないよ。
それに、ついでだしね。
一体、浅村くんは私のことを何だと思ってるんだろう。
「ごめんごめん。つい本音が……」
「は?本音がって、失礼でしょ」
「あはは、冗談だよ。それじゃ、これ頼んでもいい?」
「いいよ」
ブスッとした表情で紙を受け取り、浅村くんの分をシュレッダーにかけた。
それが終わると材料の注文に取り掛かる。
取引業者から営業担当者に連絡するか、直接、運輸部の方へ商品の注文の電話をかけることが多い。
だけど、たまにこちらの本社の方に注文の連絡がくることもあるので、私はその仲介役になる。
その場合は、私が運輸部の島村さんに注文内容と業者の連絡先を伝えている。
あとは島村さんが手配してくれることになっている。