恋のはじまりは曖昧で

お昼になり、西野さんにランチに誘われた。
いつもは社員食堂なんだけど、天気もいいから散歩がてら外に食べに行こうという話になった。

行き先は『クローバー』という創作料理のお店。
料理が美味しく、夜になるとお酒も飲めるので、昼も夜もお客さんが多い。
うちの会社の人の行きつけのお店らしく、歓送迎会などでよく利用しているとのことだ。

テーブル席に座り、お店の看板に載っていた本日のパスタランチを注文した。
ちなみに、厚切りベーコンとアスパラの和風パスタだ。
サラダとスープがついていて、ドリンクとデザートもセットで注文できる。

「橋本さん、最近忙しそうですね」

「そうなのよ。ちょうど今、現場が四つも重なっているから、身体がいくつあっても足りないわ」

西野さんと話をしているのは営業の橋本光さん。
男性にも負けず劣らずな仕事っぷりの営業をしていて、残業している姿をよく目にしている。

橋本さんがちょうど出先から戻ってきて、話の流れで一緒にランチを食べに行くことになった。

「こうやって高瀬さんと一緒にランチを食べるのは初めてよね」

「は、はい!」

思わず背筋を伸ばし返事をする。
橋本さんは、基本グレーやネイビーのパンツスーツに身を包んでいる。
ジャケットの上に作業服を着てバリバリ仕事をしていて、女性の私から見てもかっこいいと思う。
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