恋のはじまりは曖昧で

「そういや、弥生は彼氏は出来た?前に合コンで惨敗したって言ってなかったっけ?」

「えー、ちょっと待ってくださいよ。橋本さん、何言ってるんですか!その合コン、一年ぐらい前のことなんですけど」

「え、そうだっけ?」

「そうですよ。仕事のしすぎで記憶が飛んでいるんじゃないんですか?正直、合コンはこりごりだから二度と行きたくないですね。簡単にいい男なんて見つからないし」

西野さんの言い方からして、合コンで嫌な出来事があったというのが推察される。

「橋本さんも結構いないですよね」

「そうだね、五年ぐらいはいないかな。でも、今は仕事が楽しいから男はいらないわ」

「うわっ、カッコいい!そんなこと一度でいいから言ってみたいですね」

へぇ、西野さんも橋本さんも彼氏はいないのか。
二人とも美人だし、いると思ってたんだけどなぁ。

話を聞きながらベーコンをフォークで突き刺し口に入れる。

「ねぇ、高瀬さんはいないの?」

「へ?」

急に話を振られ、変な声が出た。
口の中のベーコンを慌てて咀嚼していたら、橋本さんが改めて聞いてきた。

「だから彼氏は今いないの?」

「はい、いません」

「何だ。仲間じゃん」

西野さんが嬉しそうに笑う。
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