恋のはじまりは曖昧で
「でも、うちの営業の男性陣を見てると目が肥えてしまって、なかなかいい男を見つけるのは難しいんですよね」
「あー、それはあるかもね。うちのは結構レベル高いと思うよ。それに、いい男はだいたい彼女持ちだしね」
「そうなんですよ。どうしてその彼女より早く出会えなかったんだ?っていつも思います」
西野さんが手に持っていたスプーンをお皿に置き、ため息をつく。
その話題に入っていけない私は、フォークに巻きつけたパスタを黙々と食べつつ耳だけは澄ます。
「そういえば、原田部長も河野課長も社内恋愛の末に結婚したんですよね。まさか、課長までとは思いませんでした」
「あはは。しかも、相手が花音だしね」
「それには本当に驚きました。二人とも会社ではそんな素振りは全然見せてなかったので、聞いた時の衝撃は大きかったですね」
「そう?河野の方は分かりやすかったけど」
へぇ、原田部長と河野課長は社内恋愛なんだ。
知らなかった情報を聞き、なぜかドキドキしてしまう。
「それは橋本さんが課長と同期だからじゃないですか?課長ってクールだし、無駄口を言わないから分かり辛いですよ。プライベートなことは全く話さないし」
「まぁ、それもあるね。河野の場合は口より目って感じだから」
口より目?
どういうことなんだろう。