恋のはじまりは曖昧で
「いいっすよ。どれ食べます?」
「ポッキー」
「了解っす」
「サンキュー」
浅村くんから箱を受け取ると早速開封し、ポッキーを二本手に取り口に入れていた。
「久々に食べたら美味いな」
本当に美味しそうに食べ、子供のように笑う田中主任の顔が可愛くて胸がキュンとした。
え、ちょっと待って。
何これ!
高鳴る胸を押え、窓の外を見る。
おかしいなぁ。
以前は田中主任の笑顔を見ても何ともなかったのに……。
自分自身の変化に少しの戸惑いを覚えた。
一つ、思い当たるとしたら私が請求ミスをした時、会議室で田中主任に抱きしめられたことだ。
あの時から、少なからず田中主任のことを意識している気がする。
別に、あからさまにっていう訳ではない。
何となく視線が田中主任の方にいったりとかそんな感じ。
恋愛に関して、どちらかといえば私は疎い方だと思う。
大学の時に仲がいい男女三人ずつの六人グループでいつも一緒にいた。
そのせいか、この中で誰と誰が付き合ってるんじゃないかってよく言われた。
だけど、グループ内で付き合うとかは一切なかった。
みんな気の合う友達で、恋愛感情はない。
男女の友情は成立するといういうメンバーだった。