恋のはじまりは曖昧で
「ありがとう。ところで高瀬さん、今はどこにいる?」
「現場の入り口付近です」
「了解!すぐ行くから待っててね」
通話が終わり、スマホをバッグの中にしまう。
はぁ、緊張した。
いまだに電話は慣れない。
友達ともラインやメールばかりであまり電話で話す習慣がなかった。
だから余計にかも知れない。
会社でも電話対応を少しずつ実践しているけど、途中でパニックになり自分が何を喋っているか分からなくなる時がある。
いきなり要件を言い始める人もいれば、早口で何を言ってるのか分からない人、声が小さくて聞き取りづらかったり多種多様だ。
何とか対処しているけど、どうしても分からない内容だったりすると片岡さんに頼ってしまう。
下手に受け答えして相手側を怒らせてもいけないし、困ったらすぐに報告するようにと教育されている。
新人のミスは想定済みだし、それをフォローするのが私たちよと一番最初に片岡さんが言ってくれた。
それにしても今日はいい天気だ。
私の頭上には青空が広がり、眩しい日差しに目を細める。
今日は暑いから半袖でもいいかも知れない。
「高瀬さん、お待たせ」
爽やかな笑顔と共にヘルメット姿の田中主任が現れた。
「あ、ヘルメット……」
ワイシャツの上に会社名の入っている作業服を着てヘルメットをかぶっている田中主任を初めて見た。