恋のはじまりは曖昧で

すでに、二階の宴会場は人で賑わっていた。
席もほとんど埋まり、今か今かと開始時間を待っている感じだ。

「熱気がすごいですね」

「ホントだね。他の部署もいるから、初めて見る人が多いわ」

「弥生さんも社員旅行は初めてなんですよね」

「そうなの。何か圧倒されるわ」

二人で顔を見合わせていたら、宴会場の入り口で総務の人に呼び止められた。

「ビンゴゲームの時に使うカードです。始まるまで大切に持っていてくださいね」

「分かりました。ありがとうございます」

ビンゴカードを渡され、営業部と書いているプレートがあるテーブルへ足を進めると、すでに男性陣は揃っていた。

ずらりと並ぶイケメンたちの浴衣姿は本当に圧巻だ。
浴衣マジックというものなのか、二割増しでかっこよく見える。
実際にかっこいい人ばかりだけど。
これはうっかり見惚れてしまうレベルだ。
原田部長なんていつもはワックスで髪の毛をまとめているけど、温泉に入ったからなのか髪の毛はおろされていて若く見える。

私たちの席は……と、空いてる場所が横一列に四つあった。

席はあったけど、この並びは嫌なんだけど。
だって、目の前は男性の営業の人たちが座ってる。

まだ正面が女性だったら少しはよかったのにと思いながらも、奥から三浦さんたちに座ってもらって私は一番端っこに座った。
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