恋のはじまりは曖昧で
「え、ちょっと待って。ししとう嫌いなの?」
「バレた?何かピーマンとかししとうの“ザ、緑色”っていうのが苦手なんだよな」
子供みたいにペロッと舌を出す。
「私、ししとうより違うのがいい。エビとかちょうだいよ」
「おい、贅沢言うなよ。それに、食べ過ぎると太るぞ」
「大きなお世話なんですけど!」
思わず口を尖らせた。
女子に向かって太るとか言うなんてデリカシーがないんだから!
私のお皿にししとうが二つ増えた。
「二人は同期だけあって仲いいんだね。いつも楽しそうに話してるし」
私たちのやり取りを見ていた弥生さんが、私と浅村くんを交互に見る。
楽しそうにってそんな風に見られていたなんて驚きだ。
「やめてくださいよー。全然そんなことないですから」
「でた、高瀬のツン!ここは素直に“仲いいですよ”って言っとけばいいだろ。ホント俺に対する扱いが冷たいんだよな」
私がハッキリと否定すると、今度は浅村くんが口を尖らせる。
それよりツンて何なのよ!
別に冷たくしているつもりはない。
浅村くんは気心知れた仲って訳じゃないけど、幼なじみの海斗と同じような感覚で話をしてしまうから、そんな風になるのかもしれない。
「紗彩ちゃんが羨ましいな」
弥生さんが頬杖を付きボソリ呟いた。