恋のはじまりは曖昧で

いくらテンパってたからってこんなバレバレの嘘ついてしまい、さすがに誤魔化すのが下手過ぎたかも知れない。

「そうなの?じゃあ、部屋に戻って寝る?」

え、弥生さん?
なぜか疑いもせず信じてくれた。
もしかして、弥生さんは天然なんだろうか。
でも、それがありがたかった。

今日はいろいろあり過ぎたから、おとなしく部屋に戻るのが正解だ。

「はい、そうします」

「じゃあ、私も戻ろうかな。何か疲れたし。三浦さん、私たち先に戻りますね」

「了解。お疲れ様」

「お疲れさまです」

三浦さんたちに挨拶して、弥生さんと一緒に宴会場を出た。

「社員旅行ってこんな感じなんだね。気難しい役職クラスの人たちがお酒を飲んで歌っている姿を見て驚きしかないわ」

「確かにそれはありますね。仕事中では絶対に見られないですもんね」

「浅村くんは場の雰囲気を盛り上げる天性のものがあるのかな」

「あー、あるかもしれませんね。急に指名されて、あんな流ちょうに話できませんよ。女子社員の歓声もすごかったですね」

「あ、うん。そうだね……。浅村くん、モテそうだし」

「あまり同意したくないですけど、実際に浅村くんタイプはモテますもんね」

そんな話をしていたら、あっという間に部屋に着いた。
私たちは部屋に入り、順番に歯磨きをして寝る準備をした。
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