恋のはじまりは曖昧で
怒ってないことにひとまず安堵し、再び田中主任の顔を見た。
まつ毛がすごく長くてパッチリとした綺麗な二重。
アッシュブラウンの緩くパーマのかかった髪の毛は残念ながらヘルメットで隠れている。
田中主任は見た目だけじゃなく、大人の魅力を持ち合わせていて物腰も柔らかく王子様という言葉がピッタリだ。
そういえば、見てて飽きないと言われたことを思い出すと、私ってただのアホの子みたいだ。
気を取り直し、持っていた封筒をクリアファイルごと田中主任に差し出した。
「片岡さんから頼まれた封筒です」
「ありがとう。これに請求書が入っていたんだ。一度、会社に戻る予定だったんだけどなかなか抜けれなくてね。持ってきてもらって助かったよ」
それを受け取ると、田中主任は柔らかな笑顔を見せた。
思わず見惚れてしまうぐらいの表情でドキッとしてしまう。
「いえ、とんでもないです。お役に立ててよかったです」
何とか平静を保ちつつ答えた。
「そうだ、高瀬さんはここまでどうやってきたの?」
「電車と徒歩です」
「タクシーで来なかったの?」
「はい」
田中主任は私の言葉を聞き、顎に手を添えて考え事をしている。
どうしたんだろうと思っていたら、田中主任は口を開いた。