恋のはじまりは曖昧で
「何よ。え、まさか……」
今までの会話を冷静に思い返すと、流石の私も気付いてしまった。
「浅村くんて弥生さんのこと――」
「おい、バカ!大きな声で言うなよ」
私の言葉を遮り大声を出す。
いやいや、そっちの声の方が大きいでしょうが。
「何々、弥生がどうしたの?」
不意に話しかけられ、私はビクッと身体を震わせた。
「あ、三浦さんと弥生さん……」
まさかの本人登場に正面を見ると、浅村くんも焦った表情をしていた。
三浦さーん、心臓に悪いので急に話しかけないでくださいよ!と心の中で言う。
「二人してなんの話をしていたの?しかも弥生の名前が出てたし」
もしかして、聞かれていたのかな。
浅村くんと顔を見合わせ、「どうにかして誤魔化そう」とアイコンタクトした。
「まさか、私の悪口とか?」
「いえ、決してそんなことは。ねぇ、浅村くん」
「あぁ。そんな悪口なんて言う訳ないじゃないっすか」
お互い、本当のことを言えないから三浦さんと弥生さんの追求から逃れるため必死に誤魔化す。
「弥生さんは頼りになる先輩なんだよって浅村くんに話してたんです」
「ホントかなぁ?あ、席いい?」
「はい、どうぞ」
浅村くんはガタッと席を立ち、自分の隣の椅子を引く。