【短】勇者の腕枕で アルマゲドン回避
「うん…」
あたしがうなずいた途端。
もうこれ以上、堪えきれない!と言うように、カズミチの温かい舌があたしの口の中にグイッと滑り込んできた。
駅前通りにあるオデオン座は、
偶然にも、今日で閉館だった。
年長さんの時、パパとママと3人で、アンパンマンを観にきた思い出がある。
テーマソングが気に入ったあたしは、家や保育園でしつこくその歌を歌ったっけ。
1人で映画を観るのは、生まれて初めて。
でも、仕方ない。
カズミチは、職員会議で帰りが遅くなるから、それまで時間潰さなきゃ。
今夜、寝るとき、腕枕して欲しいな。
今から、ドキドキしてしまう。
担任の先生の家にお泊まりなんて、こんなことばれたら、そこそこ、大変な騒ぎになるだろうな。
とりあえず、映画に集中しよ。
コーラとポップコーンを買って、ギシギシいうシートに座った。
観客は、ガラガラ。
これは潰れるワケだ。
隕石が落ちてきて、人類が滅亡の危機さらされるパニック物語が始まった。
極限の状況の中、勇気あるものが困難に立ち向かう。
面倒くさい、なんて一切言わずに。