【短】勇者の腕枕で アルマゲドン回避

シャーペンで、Lの字の図形を描いたあと、右側の角っこをぐるぐるマークして、
『1階生活指導室』と書いて、あたしに手渡した。



夕暮れの校舎は、なんだか懐かしかった。


窓から、野球部と陸上部が頑張ってるのが見える。

平和な日本の放課後の光景。


「おー、いい汗かいてるねー」


立ち止まって眺めていると、
どこからか、吹奏楽部の楽器の音。



生活指導室とやらのドアをガラリと開けると、誰もいなかった。


小部屋に、先生のデスクに肘掛の付いた椅子、生徒用の折りたたみ椅子が置いてあった。


わあ、説教部屋みたいな感じ、とニンマリ。



薄暗い部屋に佇む。

窓から差し込むグレープフルーツ色の陽光があたしのボブヘアーを銀色に輝かせる。
うっとりするほど綺麗だ。


毛根から金髪に染めたそれは、夏の陽射しと溶け合い、完全に自分の色を失っていた。



「すまん、遅れて」


背後で声がして、振り向くと担任の鈴木カズミチがいた。


カズミチは体育教師で、サッカー部の顧問をしている。女生徒に人気があるらしい。



白いTシャツに青いアディダスのスボンを履いていて、なぜか手には、黄色いプラスチックのメガフォン。


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