【短】勇者の腕枕で アルマゲドン回避
「…俺は恋をしたら、いつでも本気だよ」
「じゃ」
いつか何かのドラマで観た若手女優の演技を思い出しながら、あたしは挑発的な上目遣いをしてみた。
「あたしのカラダ、自由にしていいから。あたしと恋をしてよ」
「……あ?」
カズミチの太い眉毛がクッと歪んだ。
「ふざけるのもいい加減にしろ!」
怒鳴り声と、ボムッという大きな音がして、あたしの金髪がぱらりと揺れた。
カズミチがメガフォンであたしの脳天を叩いたのだ。
「…」
「…」
カズミチが…叩いた。
あたしは、呆然とした。
眉間に皺を寄せ、顔を紅潮させているカズミチ。まだ怒ってる。
空気の塊がぶつかったみたいで全然痛くなかったのに。
「う…」
軽い衝撃だけだったのに。
それがきっかけとなって、あたしの胸の中のドロドロが、じわじわぐるぐると逆流し始めた。
「あ……」
行き場を失ったそれは、透明な液体となって、あたしの瞳からポロポロとこぼれ落ち始めた。
あたしは、立ち上がった。
ポトンと、メガフォンが床に落ちて、転がる。
「おい…大丈夫か…」
カズミチは眉の間の皺を緩め、心配そうに、あたしの顔を覗き込んだ。