【短】勇者の腕枕で アルマゲドン回避
透き通った茶色い虹彩の瞳に、わがままでだらしない、あたしが映る。
ーーーお前となんか、遊びだったんだよ。
誰かの声がしたと思った時、
腹の底の正体不明な何かが、ぐぐっと内臓を突き上げ、暴れ始めた。
あたしの身体を大きく上下に揺らし、口から外へと飛び出したがっている。
吐き出したいっ……
あたしは、手で口を覆う。
あ、もう…我慢できな…!
「うわーーーーん!」
「….お、おい、そんな痛かったか?」
腰を浮かし、オロオロするカズミチ。
「痛くないよー、もうやだあー!なんでこうなるのー!わーん!」
鼻水も涙もどうでもいい。
とにかく今は、なんかワケのわからないムヤムヤを、大きな泣き声で追い出したかった。
「悪かったよ、泣くなよ…」
カズミチの大きな手が、あたしの頭を撫でる。
「カズミチって、呼んでいいから…」
「やだやだやだやだ…」
頭をぶんぶん振ってなきじゃくっていると、ふわり、とあたしの身体が温かいもので包み込まれた。
柔らかい真綿のようなそれは、カズミチの腕だった。
嘘みたいに簡単にあたしの涙は、ぴたりと止まる。