seasons.(シーズンズ)【完】
* 


「――な~にしてんの春輝くん」
「ぉわっ!?」


首を前後にこくこくさせ、いわゆるうたた寝状態でいる俺の耳元に思いもよらぬソプラノボイスが届く。
恥ずかしながらビクッと肩を震わせ、驚きを露にしちまった。


「んだよ、木村か」
「えへへ、夏枝じゃなくてごめんね~」


謝る意味が分からん。
別にナツを期待してたわけじゃないぞ。
ていうか木村のやつ、一人で俺のもとへ来るなんて何の用だ。


「あのね、ちょっと春輝くんに言っておきたいことがあって……」
「なんだ?」
「夏枝のことなんだけど」
「ナツ?」
「うん。夏枝のことどう思ってる?」


……待て、自惚れるな俺。
そしてちゃっかり脳の隅で期待に満ちた妄想なんてしてるんじゃねーよ俺。ふしだらだぞ俺。


「どうって……話しやすい女友達、みたいな感じだろ」
「そっか~」


いや「そっか~」って、何を納得したんだ。


「気にならない?」
「何が?」
「夏枝の……」


だがしかしながらこの遠回しに嫉妬を強調しているような言い回し。
こりゃやっぱり赤裸々な告白ルートか!?


「夏枝の家族のこと」


――なワケねーよな、うん。
こんなん分かってたさ。
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