seasons.(シーズンズ)【完】
スカートなんてことこれっぽっちも気にせず、あたしはフェンスをよじ登ろうと足を上げた。

きっと誰がどう見ても飛び降り自殺現場。

そんな時だった。


「おや、先客ですか」


秋人くんが現れたのは。


「もしかして芳賀夏枝さんですか?」


彼はこの状況にそぐわない質問を平然としてきた。

普通の人なら真っ先に止めに入るもんだと思ってたけど。

フェンスにかけていた足を下ろしてから訊き返す。


「そうだけど……アンタ誰よ?」

「進藤秋人と申します」


最初は王子様みたいな笑顔で問い掛けてきた秋人くんに、好印象は抱けなかった。

真面目そうな顔に敬語の癖して授業中に屋上にいるなんて不信感があるし、教えてもいないのに人のフルネーム知ってるし。

なんと言ってもこの空気の読めない言動ににガッカリした。


「ていうかなんで名前知ってるのよ?ストーカー?」

「知らないんですか?有名ですよ。最近転入してきた女子生徒がえらいサボリ魔だと」


あたしの知らないところですごい噂が飛び交ってるものね。

その噂も明日には悪い意味でスケールアップするでしょうけど。
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