seasons.(シーズンズ)【完】
「ところで何をしようとしていたのです?」

「はあ?アンタ馬鹿じゃないの」

「生憎鈍感でして」

「全くね。見て分からなかった?死のうとしてたの」


けろりと言い放てば、秋人くんのあたしを見る目が少しだけ見開かれた。

無表情にうっすらと驚きを重ねたような微妙な面持ち。


「……死ぬ?」

「そうよ」

「飛び降り自殺ですか?」


あたしは黙って頷く。

どうせ止めるつもりなんだろうけど、安っぽい同情なんていらないわ。

あたしはもう疲れたのよ。

そんなことを内心ぼやいていたら、


「なるほど。では見学させていただきましょうかね」


驚愕させられてしまったわ。

だって目の前に自殺祈願者がいるのよ?

同志じゃない限り普通の人なら止めに入らない?

なのにこの人はなんて言った?見学?

同情を求めていたわけじゃないけど、これにはさすがに拍子抜けしたわよ。

寧ろこの人は頭のネジが足りない残念な人だわって、こっちが同情しちゃったくらい。
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