seasons.(シーズンズ)【完】
「――ねぇ……」

「なんでしょう?」

「どうしてあたしが残されたのかしら?」


なぜ神様はあたしを不幸の犠牲者に選んだのか。

そんなことばかり考えてたら、辛くて憎くて惨めでどうしたらいいかなんて分からなくなって、ただ逃げるためにこんなことしたの。

あたしは自分が思ってた以上に、脆くて弱かった。


「それはあなたが強くなるためですよ」


うなだれるあたしに秋人くんはゆっくり歩み寄ってきて、


「よく頑張りましたね」


震える肩をぎゅっと優しく抱きしめてくれた。

伝わる温もりに目の奥がつんとなり、止め処なく涙が溢れ出てきて、


「ぅ、うわぁぁぁんッ」


秋人くんの胸に顔を埋めて、喉が潰れるほど泣きじゃくった。

初めてかもしれない。こんなに声を上げて泣いたのは。

でもあたしはそれくらい追い詰められていたの。

そのことから解放されて、張り詰めていたものが全て緩んでしまったんだと思うわ。

ダムが崩壊したように、たくさんの涙が零れてきた。

その後、本来の自分らしさを取り戻したあたしはすぐに秋人くんのことを調べ上げた。

特徴的で人気者だったから、たくさんの情報を手っ取り早く入手できたわ。

それからね。四六時中秋人くんのことばかり考えるようになって、その度に胸が高鳴るようになったのは。

あぁ、あたしは彼に惹かれている、彼のことが好きなんだなって理解した。

そりゃあんなことされたら誰だって惚れちゃうわよ。
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