seasons.(シーズンズ)【完】
「――あ」


傘から顔を覗かせて空を見上げていたナツが、何かに気付いたようだ。


「虹だわ」


ナツが指差す方を振り向けば、空には芸術的でくっきりとした七色の橋が架かっていた。

太陽の光に照らされ、キラキラと輝いている。


「きれい……」

「ああ」


時間を忘れて見入ってしまいそうなほど美しく描かれている虹に、思わず溜め息をもらしてしまう。

俺達はしばらく自然が生み出した芸術を眺めていた。


「さーて、雨も上がったしここらでお別れね」


余韻に浸っている俺に、そそくさと傘を閉じるナツ。

相変わらず切り替えのいい奴だな。


「アイスごちそうさま。また明日会いましょ!」


にこやかに告げるなり駆けて行くナツを、俺は無言で見送った。

女のくせに逞しい後ろ姿してやがる。

視覚的にゴツいとかじゃなくて、なんつーか、目には見えないオーラみたいな。

でもそれはあんな過去があったからって知っちまったら、納得するしかないよな。


「……俺も帰るか」


真実を明かされた雨上がりの午後、虹を背に俺はもどかしさを噛み締めた。
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