seasons.(シーズンズ)【完】
俺が望むのはまるで繭の中にいるような平穏なのだ。
受験生の時点でそうはいかない感が否めないのが、非常に不本意である。


「ここな」


担任が足を止めた。

……三年D組か。
ドアの上にあるプレートを見上げて違和感を覚える。
前の学校が数字表記だったせいかアルファベットは新鮮味があるな。


「じゃあ俺が入ってこいって言ったら入れよォ」


そうして一足先に担任が壊れそうな勢いでドアを開け、宿題がどうとか言いながら教室内へ。
中から漏れてくる明るい笑い声が、さっきの担任が話していたうるさい奴ばかりだとかいう事実を率直に物語っていた。

しばらくして担任の「入っていいぞォ」という締まりのない声が聞こえ、俺は深呼吸したあと意を決してドアを開いた。
教室に入るなり、まるで動物園のパンダでも見るかのような視線が一斉に突き刺さる。
一部の女子は俺の方を見ながら早速耳打ちで何やら話し始めているし、また向こうにいるツンツン頭の男子と不意に目が合ったかと思えばウインクされた。
つい表情が引きつりそうになる。
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