seasons.(シーズンズ)【完】



「冬香、こちらです」

「あ、あっくんおはよう」


それ以降というものの、私達は毎回席を隣にして講習を受けていた。

以前からちらほら噂で聞いていたし、同じクラスになってからも道徳のある人だなぁって見てたけど、あっくんは本当にとっても良い人。

細かなところにも気を配って常に心遣いを忘れていない優しさに、一緒にいてこっちが申し訳なるくらい。


「今日も暑いですね」

「本当、私暑いの苦手だから大変だよぉ」


講習には同じ東雲中学校に通う生徒もいることにはいるけど、幸いワリと大人しめで目立たない性分の子ばかりだから……って言える立場じゃないよね。

でもおかげであっくん(自分から提案しておいてなんだけど、なんかまだ抵抗あるかも)とは周りの目を気にせず仲良くできる。

一学期中はなかなか話すことができなかったから訊きたいこともいっぱいあるし、まるで話題が絶えないから塾に通うのが楽しみで仕方なくなっていた。

勉強することが目的なのに、あっくんに会うための講習会になりつつあるなんて、お父さんとお母さんには口が裂けても言えないや。

初日塾に向かう前は、暑いし疲れるしで結構憂鬱だったのにな。

私も気まぐれな性格だよね。
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