seasons.(シーズンズ)【完】
『どうもー!現役中学生やってます、芳賀夏枝15歳なりたてでーっす!』


らしいテンションでステージに現れるなり、芸人のような振る舞いで挨拶する夏枝ちゃんにつくづく感心してしまう。

ここまでといかなくとも、私もちょっとは積極的になれたらな。


『それでは聴いてください!ミュージックスタートッ!』


短いトークのあと、夏枝ちゃんがステージ横の裏方さん達に向かって指をさす。

そうしてステージの両サイドに設置された巨大スピーカーから、激しいビートを強調したメロディが流れてきた。

夏枝ちゃんが歌ったのは数年前ブレイクした女性バンドチームの曲みたい。

音楽に疎い私に加奈ちゃんが教えてくれた。

ノリの良い弾けた曲調や、夏らしさをいっぱい取り入れた歌詞は、この場の雰囲気にピッタリ。

胸打たれるそれを耳に、神経を集中させて聴き入っている私がいて……。


「すごい……」


知らなかった。歌にこんなパワーがあったなんて。

勢いのあるリズム音と夏枝ちゃんの声が見事にシンクロしてる。

まるで自分の持ち歌のように歌っている夏枝ちゃんは、ステージライトに照らされながらキラキラと輝いていた。

誰もが惹かれてしまうような、見えないエナジーがこの一曲に込められているの、ちゃんと伝わってくるよ。
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