seasons.(シーズンズ)【完】
「あたし本あんまり読まないんだけど」

「じゃあオレにちょーだいよナっちゃん」

「金沢にあげても漫画かエロ本にしか使わないでしょ?」

「わかる?」

「わかる」


夏枝ちゃんと金沢くんのスムーズなやりとりはまるで漫才のよう。

私が苦笑していると、呆れた様子の夏枝ちゃんと目が合った。

目を合わせたまま三秒ほど時は流れ、


「冬香がいたじゃないの!」


閃いたように顔が明るくなり、私の肩をがしっと掴む夏枝ちゃん。

心臓が飛び出すかと思った。


「そっか、冬香ちゃん読書好きだもんね~」


加奈ちゃんの言葉に首を縦に振る夏枝ちゃんが、図書券を押し付けてくる。


「はいこれ!アンタにあげるわよ」

「え、でも……」

「あげるって言ってるんだから大人しく貰っときなさい!ほらほら!」

「けど、今日は夏枝ちゃんを祝ってあげる日なのに、逆に私がプレゼント貰うなんておかしいよっ」


困り果てる私の意見に夏枝ちゃんは「それもそうね」と静かに納得して、新たな提案を持ち出してきた。


「じゃあ千円ずつ秋人くんと半分しなさい。秋人くんも本読むでしょ?」

「はい。僕も読書は好きですよ」

「あ、いや、そういう問題じゃ……」

「何よ?アンタは一人で二千円じゃ贅沢すぎて受け取れないんじゃないの?ならこれで文句ないじゃない」
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