seasons.(シーズンズ)【完】
頭の中にあるたくさんの文字がごちゃごちゃになってるなか、一つの文字だけがくっきり浮かび上がってくる。
そこには“夏枝ちゃん”の存在があった。
「……冬香?」
「夏枝ちゃん……」
「芳賀さんがどうしましたか?」
私、何してるんだろ。
駄目だって分かってるのに。
「これ……」
さっき夏枝ちゃんから貰った図書券を巾着から取り出す。
「これは全部あっくんが貰うものだよ」
浮かれていたら、時々忘れかけてしまう。
私が出る幕じゃないってこと。
「ですが芳賀さんは冬香にと――」
「あと私なら一人で帰れるから」
これ以上あっくんと親しくなっちゃいけない。
「今日はありがとう。明日講習で会おうね」
「待ってください、冬香!」
だってこうでもしないと私、
「またねあっくん」
あっくんのこと本気で好きになってしまいそうだから。
身を翻して小走りになる。
人ごみのなかにまぎれ、後ろからあっくんが追ってきていないことに安堵した。
彼に想いを寄せてはいけないと分かっている。
けれども「さよなら」はしたくない。
せめて傍にいさせてほしいから、だから私は「またね」って告げたの。
そこには“夏枝ちゃん”の存在があった。
「……冬香?」
「夏枝ちゃん……」
「芳賀さんがどうしましたか?」
私、何してるんだろ。
駄目だって分かってるのに。
「これ……」
さっき夏枝ちゃんから貰った図書券を巾着から取り出す。
「これは全部あっくんが貰うものだよ」
浮かれていたら、時々忘れかけてしまう。
私が出る幕じゃないってこと。
「ですが芳賀さんは冬香にと――」
「あと私なら一人で帰れるから」
これ以上あっくんと親しくなっちゃいけない。
「今日はありがとう。明日講習で会おうね」
「待ってください、冬香!」
だってこうでもしないと私、
「またねあっくん」
あっくんのこと本気で好きになってしまいそうだから。
身を翻して小走りになる。
人ごみのなかにまぎれ、後ろからあっくんが追ってきていないことに安堵した。
彼に想いを寄せてはいけないと分かっている。
けれども「さよなら」はしたくない。
せめて傍にいさせてほしいから、だから私は「またね」って告げたの。