seasons.(シーズンズ)【完】



「おせェんだよクソが」

「すいません。これでも急いだつもりだったのですが」

「テメェが呼び出したんだろーが。ざけんな」


駆け足で約束の場所へ向かうと、鋭い目付きの涼人が派手派手しい服装で立っていた。

涼人のことですから夏休み中は遊び三昧で、おまけの取り巻きがいると予想はしてたのですが。

意外や意外、お一人ですか。


「早速ですが交渉に参りました」

「あァ?」

「率直にお訊ねします。昨日ほなみ似の女の子に会いましたね?」

「……あぁ」


そこはあくまで素直に、隠す気はないらしい。


「彼女には極力関わらないでいただけますか?」

「最初から関わる気なんてねェよ」

「ありがとうございます」

「けどよ、じゃあテメェはなんなんだよ。あの女と仲良くしてるんじゃねェのか?」

「クラスメイトですから」

「テメェこそあいつとほなみを重ねてるんじゃねェのかよ」


正直、涼人の言葉が胸に刺さった。

脈拍が上昇して嫌な汗が体中から噴出してくる感じは、図星をつかれた感覚に似ている。

僕は何も言い返さなかった。

いや、何も言い返せなかったのだ。
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