seasons.(シーズンズ)【完】



「どうぞ」


住宅地にひっそりと存在していた公園のベンチに腰かけて、近くのコンビニで購入してきたタオルを手渡す。


「あ、ありがとう……」


タオルを受け取った冬香は、控えめに髪を拭いていた。

投げられたのはレモン味の炭酸水だったようで、冬香の髪から風に流された柑橘系のにおいが、僕の鼻をかすめる。


「あの、」

「ごめんね」


こちらが謝ろうとしたというのに先手を突かれてしまった。


「こんな騒ぎになっちゃったの、私のせいだね」

「そんなこと……」

「でもあっくんのこと悪く言うからカッとしちゃって……許せなかったの。あっくんが責められてるの黙って見てられなかった。自分が犠牲になってでも守りたいって思ったからあんなこと……」


すぐに自分の発言を思い返したらしい。

冬香はハッとして顔を赤らめた。


「わっ、私ったら何言っちゃってるんだろ!?今の忘れて!なかったことにしてね!」


タオルを顔面に押し付けて手をあたふたする姿は、いつもの冬香そのものだった。

でもそれを見て安心した。

てっきり人格が変わってしまったのかと心配していたのだから。
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