seasons.(シーズンズ)【完】
「どうして冬香はあの場に居合わせていたのですか?」


本題を切り出すと、冬香は僕を一瞥して目を泳がせながら口ごもり出した。


「あの……それは……」

「怒ったりしませんから」

「……そもそも、既に怒ってたりしない?」

「はい?」


僕が怒っている?

いつどこで誰に対して?

こちらがクエスチョンマークを浮かべる傍ら、冬香はおどおどしながらタオルをぎゅっと握り締めている。


「だから、講習の時のことで……怒らせちゃったからちゃんと謝って許してもらいたかったの。それで追いかけてたら……」

「なんだ、そういうことですか」


冬香の予期せぬ発言に不覚にも苦笑いしてしまった。


「な、なんで笑うのっ?」

「すいません。悪気はないんです。ただ、」

「ただ?」

「そんなことか、と拍子抜けしてしまって」

「そんなことじゃないよ。私気に掛かって講習全然頭に入らなかったんだから……」


肩をすくめてしょぼくれる冬香。

それは悪いことをしましたと言いたいところですが、生憎僕も同じ心境でしたのでここはおあいこですね。
< 187 / 410 >

この作品をシェア

pagetop