seasons.(シーズンズ)【完】
「上です」


そう言うと、あっくんはとても切ない表情で穏やかな空を見上げた。

メガネ越しに覗く綺麗な瞳が、やるせなさそうに細められる。


「ほなみは最期まで良い子でしたから、きっと今頃あの雲の上にいるのでしょう」

「……だから時々屋上に行ってるの?」

「今日の冬香。洞察力が冴えてますね」


それほどでも。褒められるようなシチュエーションじゃないよ。


「少しでも天国に近付けたらと思って授業をすっぽかしてはほなみに話しかけるんです。返事なんてありませんよ。当然ですけどね。それでも僕は償いたいのです」

「何を?」


とんでもない答えが返ってくるなんて知る由も無く、私は反射的に訪ねてしまった。


「ほなみが今あそこにいるのは僕のせいなんです」


冷や汗がこめかみを伝った。

冗談でしょ、と笑って片付けてしまいたくなるくらい信じがたいあっくんの発言が混乱を招く。
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