seasons.(シーズンズ)【完】
悟ったや否や、あたしは加奈の呼び止めを無視し、クラス分け発表の貼り紙がされている正面玄関まで一目散に向かった。


「芳賀夏枝(はがなつえ)、芳賀夏枝……」


自分の名前を見つけるべくA組から順に視線を動かす。
あたしの名前はD組の用紙の真ん中よりやや下辺りにしっかりと書かれていた。
となれば次に確認することはただ一つ。
同じD組に秋人くんの名前があるかどうかだわ。


「進藤秋人(しんどうあきと)、進藤秋人……」


自分の名前を探した時と同じように呟きながら目を血走らせる。


「あ、あったわ!」


思わず声を上げてしまった。
有難いことに予想的中で、あたしと秋人くんは同じD組だった。
つまり一年間同じ教室で授業を受けられるわけよね。
今後の学校生活を妄想しただけでニヤニヤが止まらないわ。

これは春休み中、自宅の和室にある神棚に向かって毎朝毎晩祈り続けた甲斐があったってものよ。
中学校生活最後の一年間だもの。やっぱり好きな人と同じクラスになりたいってのが乙女心よね。
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