seasons.(シーズンズ)【完】
最期だなんて言わないでほしい。

まだやりたいことは山のように残っている。

病気を克服したらまた笑い合いながら色々なスポーツをしたり、みんなで遠出したり、一緒に楽しい時間を過ごそうって約束したじゃないですか。


「ほなみ!おかしなことを言うのはやめてください!」

「もう未練なんてないや。これでいつでも逝けるよ」

「諦めてはいけません!」


らしくもないネガティブな発言に焦りを覚えた僕は、ほなみに詰め寄って肩を掴みこちらを向かせた。


「諦めも肝心って……言うでしょ?」


ほなみは笑っていた。

虚ろな目からこの上なく美しい涙を流しながら。

笑いながら涙を流すというのも奇妙な話だけれど。


「ッ、あ……くん」


心なしか呼吸が乱れている。

正直顔色も良いものとは言えない。

唐突な彼女の変化に置き去りにされた僕は、返す言葉を紡ぐことができなくなっていた。


「ぁり、が……と……」


途切れ途切れにそう告げるなり、ほなみは僕に体を預けた。

全体重をかけられ、僕は少しよろけてしまう。


「……ほなみ?」


問いかけに反応はない。

ほなみの表情は苦しみに歪んでおり、脂汗が滲み出てきている。
< 205 / 410 >

この作品をシェア

pagetop