seasons.(シーズンズ)【完】
――女の子らしい文字で書かれた長くも短くもない手紙。

僕はその内容に絶句し、涙を溢れさせていた。

やっとほなみの死を受け入れて流せた涙だ。

零れ落ちる粒がみるみる便せんを湿らせていく。

泣くな。泣いちゃ駄目だ。

ほなみがこんなにも笑顔で別れを告げてくれているのに、泣くなんて失礼じゃないか。

だけど、


「……ッ、ほなみ……ほな、みぃ……ぃっ!」


笑えるはずがなかった。

まるで涙腺の制御が利かなくなってしまったように、ぼろぼろと涙が零れていく。

僕はどうしようもなく子供だった。

自分が思っている以上に無能の子供だった。

それからというもの、涼人は僕に軽蔑の眼差しを向けるようになり、間もなく両親が意見の食い違いから離婚。

僕は母に、涼人は父のもとについた。

と言えど同じ町内に住んでいたため、涼人とは学校で顔を合わせることになっていたし、まだ幼かったのが幸いしてか、僕のライフスタイルに大した支障はなかった。

ただひとつ、ほなみを失ったことを除いては……。

僕の心にはぽっかりと穴が開いてしまった。

この空洞を埋めてくれる存在が、この先現れることはあるのだろうか。
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