seasons.(シーズンズ)【完】



そうしてあたしは屋上へエスケープしたわけだけど、授業開始の鐘が鳴ってもなかなかこの場を動く気にはなれなかった。

席に戻ったところでいつもの活気が無いことを怪しまれるだけだし、かと言って明るく振る舞える自信もない。

本当はサボりって性に合わないんだけど、今日は自分に甘くしてみようと思う。


「……あら?」


ふと目がいった花壇ではほとんどの花が枯れてしまっていた。

まだ暖かい言えど、やっぱり秋なんだなと思い知らされる光景。

だけどその中にひと際目立つ一本の黄色い花があった。


「ヒマワリだわ」


周りはみんな萎れてるっていうのに、活き活きと花びらを広げ太陽を見つめている。


「ふふ、しぶといやつね」

「同感です」


突拍子もない声。

でもそれは癒しの声でもあった。


「秋人くんもサボり?」

「ええ」

「偶然。あたしも」


振り向けばそこには紳士的な笑顔の秋人くんが立っていた。
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