seasons.(シーズンズ)【完】
釣られるかのように苦笑していたら、こちらを見た芳賀が不意打ちといわんばかりに俺に話をふってくる。


「えーとアンタ。転入生ももちろん協力してくれるわよね?」
「俺?」
「隣の席のよしみでしょ?」


そんな般若の面を貼り付けたような笑顔で言われたら、断ることなんてできないだろ。
ノリで言っちまったセリフが裏目に出てしまうとは。
俺が返答に悩んでいると、芳賀はそれを了承と解釈したらしい。


「よしきた!そうと決まれば作戦を練りましょう」


俺は「はい」とも「イエス」とも、肯定するような言葉は1ミリも吐いていないが、否定するのもなんか面倒だったので、もう勝手にしろとも言いたげな態度をとっておいた。

にしても芳賀は一体全体どんな理由があって、ここまでお節介を焼けるのだろうか。
純粋に米澤を助けたいとは見受けられん。
余程の世話焼きにしても、どうにも腑に落ちないものがある。
こんな疑いをかけてしまう俺も、随分捻くれていると自嘲したくなった。


「このプリントの裏に案を書き出していくわよ。一人三つは上げること!長谷川は五つね!」
「なぜに!?」
「転校生だから!」
「理由になってねえ!」


どうやら芳賀に目をつけられた以上、今後俺は平和という単語とは無縁な日常を送ることになりそうだ。
出会って間もない女を前に、失礼ながら薄々そんなことを悟っていた。
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