seasons.(シーズンズ)【完】
フリーフォールが苦手というのは真っ赤な嘘。

嘘を吐くことに罪悪感はあったけど、少しでも流れを自然なものにしたかったから。


「……駄目かしら?」


秋人くんは黙って何やら考え込んでいるようだった。

もしかしてハルとの目論みがバレちゃったとか?

最低な女って思われた!?

不安が頭をよぎり、あたしは息を凝らして返事を待つ。


「いえ、喜んで。芳賀さんと話したいこともあったのでいい機会です」


ズレた眼鏡のフレームをくいっと持ち上げる秋人くんの言葉に、安堵の溜め息がもれる。

これで第一段階はクリアしたというところね。


「じゃあ一緒に色々乗りましょ!まずはあれからよ!」


あたしは嬉しさのあまり秋人くんの手を引いて駆け出した。

すごい。夢みたい。

誰にも邪魔されず二人で、しかも手を取って遊園地を回るなんて恋人のようだわ。

幸せの絶頂にいたあたしは、このまま時が止まればいいのに、なんて幻想さえ抱いてしまった。


< 245 / 410 >

この作品をシェア

pagetop