seasons.(シーズンズ)【完】
「会計を済ませてきますので待っててください」


あたしが意見する前に、秋人くんは二種類のお守りを手にレジへ歩きだす。

まさか奢ってくれる気なの?


「それくらい自分で買うわよ!」

「お気になさらず。日頃のお礼のつもりです」


そんなの恐れ多すぎだわ。

お礼なんてこっちがしたいくらいなのに。

そう思っていても、秋人くんを追いかける足は止まっていた。

嬉しかったから。

秋人くんがあたしにプレゼントをくれるなんて、しかもお揃いの物だなんて……。


「どうぞ」

「ありがとう……」

「お揃いですね」

「うん」


受け取ったお守りを両手で包みぎゅっと握り締める。

リン、と小さな鈴の音が鳴った。


「本当に嬉しい」

「芳賀さんこれを見てる時ものすごく欲しそうな目をしていましたからね。そこまで喜んでくださるとこちらとしても嬉しいです」


違う。このお守りが手に入ったことじゃない。

秋人くんからもらったことに意味があるの。

お願い、気付いて?
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