seasons.(シーズンズ)【完】
*夏枝side 


故意で冬香のことを無視してしまった。

こんなみみっちい嫌がらせ、正々堂々主義のあたしらしくもない。

でも秋人くんの気持ちを知ってしまってから冬香が憎くて仕方がなかった。

あまり上辺に出さないよう気を付けてはいるけど、ここのところ苛々させられっぱなし。


「相変わらずナっちゃん長谷川に厳しいよねぇ」

「従う辺り長谷川って若干Mみたいな?」

「でも彼女に優しそうだよね。結構しっかりしてるし頼り甲斐もありそう」


ハルにパシリさせてる間にもある物だけで作業を進める教室展示班の女子は、恋愛トークに花を咲かせ出した。

その光景を見ていると薄汚い感情に踊らされている今の自分が惨めに思えた。

あたしがこんなにヘコむなんて、柄にもないわ。

あーもうこの話題でモヤモヤするのはやめよ!

それより学祭の準備に専念しなきゃよね!


「長谷川ってナっちゃんのこと好きなんじゃないの?」


一人の発言で、私に注目が集まる。

そうとは思えないけど、仮にそうだとしても私の好きな人は秋人くんだし。

でも秋人くんの好きな人は……ってまた思考がループしちゃうじゃないの!


「夏枝~~~!」


手にしていた色紙をビリビリに破りたい衝動を抑えていると、いつの間にか姿を消していた加奈が慌しく教室に駆け込んできた。

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